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ヴォイサリオン(Voicarion) ミスター・プリズナー 感想

こんにちは、やのひろです。

銀座のシアタークリエでヴォイサリオンという朗読劇のシリーズを見てきました。2つお話が合ったうちミスタープリズナーというものです。出演は・・・

山寺宏一
林原めぐみ
上川隆也

 

!!!!!
なんだこの組み合わせは!!!!!

 

ということでチケット争奪戦を奇跡的に勝ち抜いて!行ってきました。ネタバレしつつ感想書きます。

 

お芝居がほんとにほんとに、最高

お芝居が最高でした。・・・すみません、こんな言葉で。いや、でもそうとしか言えない。最高。圧倒的でした。圧倒的な説得力。

 

朗読劇ですから動きはありません。3人は台本を持って立ちセリフを言うだけです。言葉だけ。それなのにその声から伝わってくる情報量が分厚いんです。

 

特に山寺宏一さん!!!

 

3人3様の素晴らしさだったのでお1人だけフォーカスするのは正直心苦しいのですが・・・それでもやっぱり。。山寺宏一さんの声は凄かった!!

 

不思議です。山寺さんの声はよく知ってます。きっと多くの方が聞けばすぐ「山寺さんだ」「山ちゃんだ」「あ、あの人だ」って分かりますよね。日本中が知ってるといっても過言ではないほど親しまれてる声です。

 

なのに舞台で聞いた声は、全然知らない、今回初めて出会った人の声でした。しかも聞くほどに「きっとこんな人だ」「悪い人じゃない」「もっと知りたい」と思っていく。

 

どうしてだろう?と思って気が付いたのが、最初に言った”声の情報量”です。山寺さんが発するセリフから伝わることが、セリフの言葉以上に、分厚く、暖かく、客席に伝わってくる。テクニックで言えばちょっとした間とか息遣いなのかもしれませんが、とってもダイレクトに心に響く演技でした。これはもう・・・お芝居が上手いとかいう種類のものではなく、神がかってるとすら言えるのではないかと思います。本当に本当に素晴らしかったです。

 

・・・だからこそ脚本と演出が残念・・・

twitter見たらみなさん愛のあるコメントをされてたのでこんな展開にするのは申し訳ないやら怖いやら複雑な心境なのですけども。私としては脚本と演出に残念さがのこってお芝居に集中しきれませんでした。途中で冷静になっちゃってせっかくの演技に没頭できず。。すごく感動的な物語ではあったんですけどね。ディテールというか説得力がもう一歩欲しかった。。

 

単なる素人の演劇好きなファンで恐縮なのですがガバっと行きます。結構細かく語るので面倒な方は太字だけ拾ってくれると嬉しいです。

 

ポイント1:時代背景がよく分からない

 

●背景設定を早めに欲しかった:終盤に突然具体的な年号が出てくるんですけど、そこで出すなら最初にもうちょっと手厚く欲しかったです。始まった時から「ここはどんな屋敷だろう?周りの景色は?裕福そうかな?」とかいろいろ事情を探りつつ見てましたがあまり掴めませんでした。そういう世界観なのかなと思ってたのに最後だけ具体的に年号がでてきて戸惑ったので、それなら最初から物語の背景についてもうちょっと情報があったほうが自然に入れました。

 

●年号が合わない??:そんな訳で「結局いつの話だったんだろう?」というのを終わってからその年号を鍵に調べました。ラストシーン、チャールズは「クリスマスキャロルの次回作にしては重すぎだ」と言います。同時にレスは「1861年に恩赦があってね」と過去の話を始めるのですが、調べたらクリスマスキャロルの出版は1843年です。次回作は1846年に出てるそうなので普通に考えたらあれは1845年で1861年はまだ来てません。単に「クリスマスキャロルの作家がその後に出すには」という意味だったとしましょう。チャールズは1870年に58歳で亡くなってるそうなので、恩赦から5年経ってたとして(レスの話しぶりが1~2年前のことではなさそうだったから)1866年だとするとチャールズは54歳です。上川さんのお芝居はもっと若そうでした。結局何年ごろの話で、どんな年齢の人達だったのかよく分かりません。

 

ポイント2:人物像がよく分からない

 

なんで背景情報が欲しいかというと人物を具体的に描きたいからです。でも背景はよく分かりませんでした。そこで人物情報も拾おうとしましたがこれも難しかったです。

 

●なんで外交担当?:この話の肝は「エドワードは何者でなぜ収監されているか」です。それがほぼ全部ワンシーンの語りで明かされるのですけど、それがどうにも薄く感じました。まず外交を担当したという説明。なんで外交だったのか、彼の研究の何が外交に役だったのか、どの能力が買われたのかもっと知りたかった。それまでの話で彼に外交能力があるような情報は出てきませんでした。”人を操る”ってことくらいかな。でもその”操る”のからくりが何のかも明かされてなかったし。なぜ外交に抜擢されたのか、そこでどんな活躍をしたのかがざっくりしててピンときませんでした。催眠術が使えたのかもしれませんが、これは後で触れます。

 

●なんで収監?:同じく、そんな彼がなぜ捕まってるのか曖昧でした。確かセリフでは「彼を恐れた」とか「邪魔になった」とかそんな情報でしたが、物語の肝なのにそれだけではどうにも腑に落ちません。例えばその座を狙う人物がいて罠に嵌められたとか、外交上やむを得ず相手の国に譲歩してしまい政府からスパイ疑いをかけられたとか、何か1つエピソードが欲しかったなと思います。

 

●なぜレスと対話しない?:彼はレスがエドワードの悪い話を聞いてきたと気づきます。そこで対話するそぶりを全く見せずに彼女を追い出してしまいます。なんで???対話こそ学びとか言ってたのに・・・彼女の話を聞くとか、彼の立場からの弁明をするとか、もうちょっとあって欲しかった。レスが言ってた話について2人の間であまり揉まれないので結局真相が何だったのかとモヤモヤしました。いいシーンだったのになぁ・・・考えちゃって没頭出来なかったのが本当に惜しまれます。

 

●若者の心変わり:上川さん演じる若者クライヴはずっとエドワードを疑って調べていたそうですが、物陰からレスの決意を聞いて翻意します。早かったです。

 

●クライヴがくれる箱:大事なシーンの直前でクライヴはレスに箱を渡します。ミミズが入ってるよ、と。とても意味ありげな箱だったので、中には牢獄の鍵とか二人にしか分からないアイテムとか、何か入ってると思ったのですが、それ以降触れられなかったので本当にミミズが入ってたのかもしれません・・・あの状況でレスを追いかけながらミミズを集めたのかしらと思うと・・・なんか。。

 

●催眠術?:詳しくはこの後に書きますけども。「え、結局催眠術だったの?」と驚きました。

 

ポイント3:演出が・・・

 

●雪:twitterみたら「紅白で紙吹雪の中にいる北島三郎の気持ち」とありましたが、うん、、まさに。。しかも暗闇で明るいステージから白いポツポツがたくさん飛んでくるのはあまりいい気分ではありませんでした。ステージに雪を降らすだけじゃダメだったのかな?

 

●光のクルクル:終盤に細かい模様の光がステージをクルクルと覆い、正直なところ気が散りました。しかも展開も急で何が起きてるか分かりませんでした。彼は催眠術が仕えたということ?だから外交にも引っ張り出された?それまでは「声を聴いてはいけないと言われてる」とか「人を操る」とか曖昧な言葉が出ただけで、彼が意図的に人を動かすために術を使うということは語られてませんでした。冒頭でレスにおじいちゃんの振りをしてだまそうとしますが、それも老人の声真似であって催眠術とは見えなかった。クルクルもなかったし。結局レスは見破るし。私には突然クルクルがでてきた上に、突然実は術が使える設定が出てきたように感じられました。それなら何度かクルクルを登場させて「これが出てるときは術を使ってるとき」とした方がすっきりしたんじゃないかしら。

 

お芝居が最高だっただけに

なんかいろいろ挙げ連ねましたが、ようするに頭の中で人物を描くには情報が足りませんでした。私はね。時々素晴らしいフレーズもでてくる脚本だったから余計に残念です。素晴らしい舞台で最高だった!という人がいても別に否定しません。

 

俳優さんたちの声の情報量がとても多かったのに!肝心の言葉での説明が足りなくてところどころ繋がらなくて冷静になってしまう。ほんとうに残念でした。何も考えずにあの声の演技に溺れたかった。もしそれができていたら人生でも指折りの感動体験になってたと思うのに。

 

山寺さん、林原さん、上川さんのお芝居はまた別の舞台で鑑賞したいなと思いました。

 

追記:ということで別の舞台で鑑賞してきちゃいました。この話はまた今度^^