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舞台「万獣こわい」 ねずみの三銃士

舞台「万獣こわい」 ねずみの三銃士

 

こんにちは、やのひろです。

この作品は、生瀬勝久さん、新田古太さん、池田成志さんの演劇ユニット

「ねずみの三銃士」第三弾。

脚本は前二作と同じく宮藤官九郎さん、演出も引き続き河原雅彦さん。

 

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舞台の概要はこちらっ

 

キャスト・配役

マスター:生瀬さん

ヨウコ:小池栄子さん

トキヨ:夏帆さん

アヤセ:新田さん

ババ:小松和重さん

常連客:池田さん

 

あらすじの一部

ハロウィンの前日。開店を明日に控えたカフェに一人の女の子が逃げ込んでくる。

「鍵を閉めて!ヤマザキがくる!」

マスターと後妻のヨウコが事情を聴くと、

なんと彼女は7年間も監禁されていたという。

しかも彼女の家族と一緒に虐待されていて、彼女以外は全員殺されたと。

 

これをきっかけに解決したかに見えた連続監禁殺人事件だったが

実は新たな事件の始まりであった・・・。(あらずじの全貌は一番下に書きます)

 

前作と同じく怖い!そしてまさに”胸くそ悪い”!

 

古田さんがインタビューで

「感じの悪い舞台です。胸くそ悪いって言われました」

とおっしゃってましたが、ホントです。

胸くそ悪いってこういう事かぁ笑

 

今までの獣シリーズも決していい気持のエンディングではありませんでしたが

これが一番身近にある恐怖だと感じたので気分の悪さはこっちの勝ち。

こういうことってあるな!社会って最悪だな!と思わせてくれました^^;

 

舞台は時代を映すものだし、芸術は問題を提起するものだと思ってます。

このお芝居は時代も問題意識も感じさせてくれる素晴らしいものでした。

 

 身の回りにある”洗脳”

 

「真実などない。あるのは解釈だけだ」というニーチェの言葉があります。

「人間は環境の生き物である」という言葉もありますね。

人が物事をどう見るのかは環境の影響を大きく受けている・・・

と感じた時、この言葉を思い出します。

 

このお芝居を見ている間中、私は前の職場のことを思い出していました。

 

こんなのおかしいと思っても物が言えなくなる雰囲気。

間違ったことでも実行しなければならない圧力。

しまいには考えることを放棄して言われるままに作業を進める。

そんな光景が会社の中にごろごろありました。

 

いまはそこを離れてるのでこうして客観的に思い出せますが

ある集団に居ればそこの「空気」にとらわれて言動が変わるなんて

よくあることではないでしょうか。

 

それが極度に高濃度になったのがこのお芝居でした。

 

実は実際の事件を元にしている・・・?

 

モデルにしてるかどうかわかりませんが、

似たような事件は実際あったようです。

こんな残虐な事件が実際あったなんて、信じられない・・・

 

普通に考えたら数年間も家族もろとも他人の言いなりになるなんて考えられません。

でもきっと、その環境ではその判断が自然で他に道はなかったのでしょう。

 

そう思うと、

世の中は環境が引き越すことであふれているようで、怖い・・・。

 

言い換えれば全ては「キャラ」と「空気」で起こることだということ。

自分がいつそのキャラになるか、どこにそんなキャラがいるか、誰にも分かりません。

 

恐怖につながる「空気」は、案外すぐそこにあるのかも・・・。

 

 

ここからネタバレ含みます。

 

なぜトキヨの言いなりになったのかということについて、

マスターは「体裁を保つためだよ」とすがすがしいほど正直に分析します。

洗脳暴行をする集団での位置をキープしつつ、世間体も保つ。

気持ち悪いほど「人間」だと思いました。

 

対して妻のヨウコは事件を何とか世間に暴こうとするし冷静な判断力を持ち続けた。

しかし最後にはトキヨの罠にかかって死刑判決を受けてしまいます。

酷い世間ですね。正しいように見えるのに世間は認めてくれないのです。

 

正しいことをしても認められないのが世間なのか?

醜いほど世間体を保たないと迎えられないのが社会なのか?

社会性を捨ててまで迎合しなければならない社会に価値があるのか?

 

考えさせられてしまいました。

ヨウコが面会室でみせる渾身のタコ踊りが痛々しくて、忘れられません。

 

 

ネタバレを含む物語の全容

 

これは舞台なので映画と違って簡単に結末を知ることができません。

内容が知りたいけどどうしても観れない!

という方のために簡単に結末を書いておきます。

 

 

 

ハロウィンの前日。開店を明日に控えたカフェに一人の女の子が逃げ込んでくる。

「鍵を閉めて!ヤマザキがくる!」

マスターと後妻のヨウコが事情を聴くと、

なんと彼女は7年間も監禁されていたという。

しかも彼女の家族と一緒に虐待されていて、彼女以外は全員殺されたと。

この脱走をきっかけに連続監禁殺人事件は解決。ヤマザキは死刑が確定する。

 

数年後、カフェはちっとも流行らず怪しい常連客がくるばかり。

マスターは前妻と娘に支払う養育費で苦しみ、

前妻の弟で警察官のババから借金をする始末。

ヨウコとの間には子供ができずにプレッシャーに押しつぶされそうになっていた。

 

そこに連続監禁事件の被害者、トキヨがやってくる。

いまはアヤセという養父に引き取られて幸せに暮らしているという。

恩返しにお店を手伝いたいという申し出を、二人は困惑しながら引き受ける。

 

ところが次第に店におかしなことが起き始める。店の金がたりないのだ。

ヨウコはトキヨが来たころからおかしいと疑うが夫は取り合わない。

そこにアヤセがやってくる。一見温厚だが些細なことで切れるアヤセ。

二人がおびえているところにトキヨが帰ってきて養父のアヤセに詰め寄る

「誰が来ていいっていったよ、ジジイ!」トキヨの本性が現れた瞬間だった。

 

ここからカフェで奇妙な集団監禁暴行が始まる。

 

トキヨのいう「ミーティング」で集団の順位が決められ

最下位は電気ショックを受ける。

これはまさにトキヨがあの監禁事件でされていたのと同じことだった。

恐怖に怯えながらトキヨが怖くて誰も行動に出られないメンバーたち。

ついに義理の弟ババが電気ショックで命を落とす。

慌てふためくメンバーだが、トキヨの指示に従って死体の処理を手伝ってしまう。

 

こうしてメンバーは全員共犯者となってしまい、

トキヨは一切手を下すことなく集団を死に追いやっていくのである。

 

何とか解決しようとするヨウコの努力の甲斐あって事件は明るみにでる。

自分も告訴されたヨウコは裁判で

「どんな罪でも控訴しません。夫にも罪を償ってほしい」と証言する。

 

そこにマスター側の証人としてやってくるトキヨ。ヨウコはおののく。

トキヨは全てヨウコの企んだことだと証言するが、

ヨウコは虐待の影響が濃く対抗できない。

結局ヨウコだけが収監され(おそらく死刑判決)、

夫は外で暮らし続ける(執行猶予?)

 

二人が経営していたカフェは売りに出されることになった。

新しいオーナーカップルが開店を明日に控えて準備をしていると

少女が駆け込んでくる。

「鍵を閉めて!ヤマザキがくる!」

 

閉幕

 

それではまた!